【応援席戻りたくない】試合途中トイレの鏡を見て足が止まる夜
試合、まだ途中で。
トイレに入った。
鍵を、閉めた。
鏡の中に、誰かいた。
さっきまであの席で笑ってた人と
同じ顔をした、誰かが。
声で聴くほうが、合うかもしれない。
拍手して、声出して
いい母親のふりをするたびに、
中身が空っぽになっていく。
ふりをするたびに。
ふりをするたびに。
また戻らなきゃ、って。
分かってる。
試合、まだ途中だし。
あの席に私の場所があって、
そこに戻れば、また笑えて、
また声が出て、
また、いい母親になれる。
なれる。
なれる、んだけど。
良い母親を演じるたびに
ふと、浮かんだ。
良い母親を演じれば演じるほど、
あの子のことが、
どんどん、
嫌いになる。
言い直さない。
嫌いになる。
泥だらけの靴を洗うみたいに、
このドロドロした自分も洗えたら、
って。
洗えない。
洗えないまま、また靴を汚すために、
あの席に戻る。
「あそこの家は大丈夫」
って、思われてる間に、
私の本当の居場所が、
なくなってる。
結局、私はあの子を愛してるんじゃなくて、
愛してる、と思われたくて、
ここにいる?
違う、そんな話じゃない、
違う、そういうことじゃなくて、
この個室だけが、
誰にも何も期待されない、
唯一の場所。
鍵、閉めてる間だけ、
息ができる。
息が、止まる。
止まるのに、息ができる。
鍵に手をかけるまでの時間が
終わってないまま、置いてるだけ。
ちゃんと考えた結果じゃ、ない。
どうにかしようとしたわけでも、ない。
ただ、鍵に手をかけるまでの時間が、
少しだけ、長くなっただけ。
誰か、この演技を終わらせて、
なんて、
言えない。
あの席に戻ったら、
また笑える。
笑える自分が、
いる。
それが、
いいことなのか、
怖いことなのか、
分からないまま、
鍵に、手をかける。
ここに書いたような夜を、
そのまま口にしている人もいます。
まとまっていなくて、
答えも出ないまま、
途中で終わることもあります。
この記事を書いたのはこんな人

沖増 茂伸(おきます しげのぶ)
元社会人野球選手。今も、応援席の端にいます。
言葉が出てこなくなる時間や、判断が止まったまま座っている背中を、何度も見てきました。
このブログでは、正解も、意味も、まとめも置いていません。
読んで、閉じて、そのまま残っても、何も起きなくても大丈夫な場所です。
静かに、判断を止められる場所
今の心の状態を、静かに確認できるシートをLINEでお渡ししています。
それから……もし誰にも言えない本音や、やり場のない言葉があれば、そのLINEにそっと置いていってください。
もし、一人で考え続けるには少し疲れてしまったら、静かに話すためのマンツーマンレッスンの時間があります。
正解を探したり、何かを変えるための場ではありません。
これまで飲み込んできた判断や言葉を、整えずに、そのまま置く時間です。

