【早く辞めてほしい】少年野球の帰り道、無言の車内で削られた週末を計算している

試合の帰り道、バックミラーを見た。

泥だらけの顔が映って、

スッと、目を逸らした。

ウインカーの音だけが、やけに響いてた。

カチ、カチ、カチ、カチ。

 

後ろで寝たふりしてるのは、分かってた。

分かって、気づかないふりして、ハンドルを握ってた。

「頑張ったね」が、喉のところで止まったまま、溶けた。

 

声で聞く方が、たぶん、楽かもしれない。

 

帰り道の、途中のまま

「子どものため」って、

今日だけで何回、唱えたんだろ。

グラウンドの端で立ってた間に、何回。

何回唱えても、ベンチで下を向くあの子を見るたびに、

引きずり出したくなる気持ちが出てきて、

それを「子どものため」って言葉で、ぎゅっと押さえてた。

押さえて、押さえて、また押さえて。

ガソリンのメーターが、また減ってた。

見た瞬間、みぞおちのあたりがズンって重くなった。

また削られた、って。

 

よその子が三振した、その瞬間のまま

ふと、浮かんだ。

三振した瞬間、あの子。

うちじゃない、よその子。

口角が、上がりそうになった。

なった。

一瞬、なった。

気づいて、すぐに前を向いた。

でも、なった。

確かに、なった。

それを、今も持ってる。

車の中で、ずっと持ったまま、家まで帰ってきた。

あの子のお母さん、隣で立ってたのに。

 

辞めたいなら、の途中

辞めたいなら早く言えばいいのに、って何度も思ってた。

言えよ、って。

引き止めないから、って。

でも。

いざ辞めるって言われたら。

今まで削ってきた私の週末は、どうなるの。

土曜日。日曜日。

朝の4時に起きた朝も、雨の中で立ってた時間も、

ガソリンのメーターが減るたびにちょっとずつ削れてった何かも、

全部、どうなるの。

見返りなんて求めてない、って言いたい。

言いたいけど、求めてる。

求めてる。

 

疲れた。

家に着いて、重い足音が玄関に消えて、

洗面所で、泥がついた靴下を洗ってた。

こすっても、こすっても、薄くなるけど消えない。

消えなければいいのに、って思った。

この汚れが落ちなければ、

ずっとここで、こすり続けられる。

落ちなければいいのに。

落ちなければ、

 

泥水と一緒に流してしまいたい言葉があるなら。

プロフィールの奥に

誰も開けないゴミ箱を置いてある。

ただ黒い感情を打ち込んで

そのまま放置するための場所。

 

 

 

 

沖増 茂伸(おきます しげのぶ)

元社会人野球選手。今も、応援席の端にいます。

言葉が出てこなくなる時間や、

判断が止まったまま座っている背中を、何度も見てきました。

このブログには、正解も、意味も、まとめも置いていません。

読んで、閉じて、そのまま残っても、何も起きなくても大丈夫な場所です。

詳しい物語(プロフィール)はこちら

 

誰にも言えない言葉があるなら。

この先は、誰も見ていない、ただのLINEです。

正解を探す場所でも、何かを変える場所でもありません。

ただ、やり場のない言葉を、そのまま置いていって構いません。

▶︎ 宛先のないゴミ箱として使う

※言葉が出ない時は、今の状態にただ丸をつけるだけのシートが置いてあります。

 

 

一人で抱えることに疲れたら。

何も解決しないけれど、ただ口に出して、

飲み込んできた言葉をそのままテーブルに置く時間が、ここにあります。

▶︎ 母親のため時間