【逃げ出したい】寄り添うふりで画面をスクロールする指、口の中に広がる鉄の味

深夜のキッチンに 電気はついていない

スマホの光だけがある

指が画面の上をなぞっている

何を探しているのか もう分からない

 

この音声は その夜の独白をそのまま収めたもの

声が止まったあとに残っているものだけ ここに置いてある

 

昨日 窓の外をランドセルを背負った子が通った

当たり前みたいに

足取りが 軽かった

うちの子は その時間 カーテンを閉めた部屋の中にいた

それだけのことだ

 

声を聴いた瞬間に 顔が何かを演じ始める

言葉を探す

口を開く

また 検索窓に文字を打ち込んでいる

 

他の親は 今夜こんな場所に座っていないんだろう

電気もつけずに 画面をなぞっていない

寄り添っているふりをした

今日も 昨日も その前も

 

みぞおちのあたりが また重くなる

胃液が這い上がってくる

口の中が ずっと鉄の味がしている

 

明日 ユニフォームを洗わないといけない

泥がついたまま 脱衣所に置いてある

朝 弁当を作る

それだけのことが 来る

来るんだ

 

脱衣所に 泥のついたユニフォームがある

検索窓に打ち込むのをやめた文字の捨て場所が

プロフィールの奥に置いてある

 

 

 

 

沖増 茂伸(おきます しげのぶ)

元社会人野球選手 今も 応援席の端にいます

言葉が出てこなくなる時間や

判断が止まったまま座っている背中を 何度も見てきました

このブログには 正解も 意味も まとめも置いていません

読んで 閉じて そのまま残っても 何も起きなくても大丈夫な場所です

詳しい物語(プロフィール)はこちら

 

 

誰にも言えない言葉があるなら

この先は 誰も見ていない ただのLINEです

正解を探す場所でも 何かを変える場所でもありません

ただ やり場のない言葉を そのまま置いていって構いません

▶︎ 宛先のないゴミ箱として使う

 

 

一人で抱えることに疲れたら

何も解決しないけれど ただ口に出して

飲み込んできた言葉をそのままテーブルに置く時間が ここにあります

▶︎ 母親のため時間