<間違いだらけの野球教室>疲れてから上手くなるについて
正月休みも明け、いよいよ今年最初の練習を開始したチームや選手が多いと思います。「全国制覇」を目標に掲げるチームや「昨年の悔しさ」をスローガンに練習に取り組むチーム、選手も多くいるはずです。
私も個人的に正月早々自分のスローガンを決めて練習に取り組んでいました。私のスローガンは毎年「昨年より上の成績」と言う何とも分かりやすそうで分かりにくい「スローガン」でした。
分かりにくいというか具体性がなかったのでどう行動していいのか分かりませんでしたので、去年と同じ練習をしていたら去年より成績が下がってしまう。であれば、昨年以上の練習を自分で課して厳しく練習をしよう。
と言った根性論的なことも掲げていた時期もありました。まー社会人時代なので特に猛練習することに何の問題も無かったのでいいのですが、小学生や中学生などの場合には気をつけた方がいいのです。
今の時期、野球はシーズンオフです。今の時期に体力、技術を向上させるとても大事な時期です。この時期にどれだけチームのレベルアップができるのか、個人のレベルアップができるのか?この時期で1年間のすべてが決まると言っても過言ではありません。
2月からプロ野球のキャンプが始まります。キャンプと言えば地獄のようなキャンプをするチームもあります。その地獄のような厳しい練習を耐え、乗り越えるために選手も1月から自主トレを始めます。
自主トレでも自分に厳しく、ハードな練習をする選手も多く見えますが、それも1月2月の時期の練習はとても大事な時期と感じているから厳しくハードな練習を自分に課すのです。
それを観た指導者も「この時期は大事だから厳しく練習をしよう」と思っている指導者の方、ご注意ください。
確かに、この時期は野球選手にとってとても大事な時期です。プロ野球選手に限らず社会人野球選手、高校野球、小学生にとっても体力、技術を向上させる時期ですが、プロ野球選手と同じような練習を中学生、小学生にやらせてはいけません。
とっても多くみられるのが、厳しい練習と言えば特打・特守ではないでしょうか?守っている選手が立てなくなるまでノックを受け続ける。ユニフォームが泥だらけになるまでノックを受ける。バットが振れなくなるまで打ち続ける。打ち終わった後は倒れこむぐらい振込む。
こう言った場面をよく見かけると思いますが、そもそもこう言った練習に意味があるのか?と言った疑問もありますが、特打、特守の意味は何なのでしょうか?
私が社会人野球選手の時によく言われたのは「バットを振れば振るほど上半身の力が抜けて下半身で打てるスイングができる」「疲れ切った身体で守るから上手くなる」と言われてきました。
このことに関しては全否定しませんし、以前の記事にも書きましたがプロ野球選手や社会人選手なら分かりますし、きちんとした指導ができる指導者がいれば問題はないのですが、それ以外の選手には意味がないと言えます。
プロ野球選手や社会人選手は基礎ができていますのでいくら身体がヘトヘトになっても本能で打ったり、守ったりできるのです。しかし基礎もできていない体力もない子どもにこのような練習をさせることは子どもを下手にしていくことになります。
あなたが野球でプレーしていたころを思い出してください。あなたの野球人生ですごくよかったプレーはいくつもあるはずです。「キレッキレの速球が投げれた」「特大のホームランを打った」「いいプレーができた」などたくさんあるはずです。
そのプレーを思い出してなぜそのようないいプレーができたのか「言葉」で説明してください。と言ったらきちんと「言葉」で説明できるでしょうか?
これが説明できることが理論に沿った指導なのですが・・・・
「言葉」で説明できる人は少ないと思いますが、ではその時の「感触」や「感覚」は思い出せますか?
ボールの感覚、バットを握った感覚、打った時の感触は「言葉」では説明できないですが「感触」「感覚」は覚えているはずです。
人間は五感の動物です。野球選手に限らずスポーツ選手はこの五感を非常に大事にします。
「バットを握った感覚」「ボールの見え方」「身体の感覚」「ボールの感触」などベストパフォーマンスができたときの感覚は手や足、身体で覚えています。
この感覚を身に付けるために毎日練習を続けているのです。
私もこの感覚は非常に大切にしてきました。この感覚を味わうために練習を続けてきました。その感覚を味わい続けたら今度は「感覚」を「言葉」で説明ができるようになるのです。
以前の記事で「バッターボックスの立つ位置」のテーマで私はどんなピッチャーが来ても、調子が良くても悪くても立つ位置は変えない。と書きましたがそこには「目で見る感覚」を常に一緒にしていたいからなのです。
私も社会人時代にバッティング練習をしていて「この感覚」と言うものを掴みました。「この感覚」と言うものを身体に覚えさせるために練習後もマシーンを相手に何時間も打ち込みました。
感覚が残っているのでいいスイング、いい打球が飛びます。次の練習の日も感覚が残っているのでフリー打撃でも同じように良いスイング、いい打球を連発で飛ばしていました。
練習後もまた「この感覚」を身体に覚えさせるために練習後もマシーン相手に打ち込もうと思っていました。ところが偉大なる先輩が私のところにきてこう言ってきました。
「今日はもう帰ってゆっくり休め。そして遊びに出かけろ!」と私に言うのです。私は「えっでも今、いい感じなのでこの感覚を忘れたくないので練習したいです」と言ったのですがその偉大な先輩はさらに「忘れたくないのなら帰って遊びに行け」と言うのです。
偉大なる先輩に言われたのですから、仕方なく帰ることにしたのですがさらに帰り際にもう一言「今日はバットは絶対に握るな!しかもバッティングした時の「感覚」も思い出すな」と言ったのです。
さすがに戸惑いましたが偉大な先輩が言われたとおりに帰ったからバットも握らず感覚を思い出すことなく一日を終えました。思い出すなと言われても思い出すのが人間ですがその日は不安で不安でたまらない日になりました。
この偉大なる先輩が言いたかったことはすぐに結果として現れ分かりました。実は調子がいいときや「この感覚」を掴んだ時に練習を切り上げた方が自分の調子の波を把握できるバロメータになるのです。
いわゆる五感が働くようになるので「なにかおかしいな」と思った時も「この感覚」を思い出し、いつもと変わらない状態に戻してくれるのです。
もし、あの時偉大なる先輩が「帰れ」と言わずにずっと練習を続けていたら練習のやりすぎによって「この感覚」は失われ残るのは身体の疲れだけです。
私の性格は納得するまでとことんする性格なので、練習を続ければ続けるほどどんどん感覚が失われ調子を一気に落としていたのです。
「バットを振れば振るほど上半身の力が抜けて下半身で打てるスイングができる」「疲れ切った身体で守るから上手くなる」というのは結局、感覚を掴むこともできず、掴んだとしても忘れてしまい残ったのは「疲れた」という感覚だけ。
自分の体重移動の仕方、打球を見る目線、足の運び、打球への入り方、バットの出し方、グローブの出し方など本来は感覚として身に付けることが「疲れた」感覚によって抜け落ちてしまうのです。
これではいくらバットを振っても、たくさんノックを受けても上達するはずがありません。
プロ野球選手や社会人野球選手は別として、1日1000スイングとか1日500本ノックと言う練習をするよりも、自分自身で上手くできたと思った時点で練習を切り上げることも必要です。
「バッティングのいい感覚・感触」「ピッチングのいい感覚・感触」「守備のいい感覚・感触」を身体に残すことも大切な練習・イメージトレーニングになります。
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